その中で、大学時代の恩師が鳥取市河原町西郷地区におられる白磁の人間国宝、前田昭博さんと知り合いだったこともあり、私が作業場を探していることをお知りになったんです。ちょうどそのころ西郷地区では工芸作家の移住の全国公募をされていて、研修費が出たり空き家の紹介もされていると教えていただき、いいなぁと思って見学に行き、応募したことがきっかけです。
2020年に栃木県から移住廣瀬さん・小渕さんご夫妻
雨や雪には戸惑ったけれど、新しい環境で作品作りに挑む
Profile
ご夫婦・30代で移住を決意
2020年 栃木県から鳥取市へIターン
ぶっちゃけ話、聞いてみました! INTERVIEW
Iターンされる前のお仕事を教えてください。
廣瀬さん
栃木県の益子町で陶器の焼き物を作っていました。
ご夫婦ともに益子町で陶芸家をされていらっしゃったんですか?
小渕さん
移住前は製陶所で修行していたんですが、鳥取市に移住してから本格的に独立して自分の作品を作り出しました。
廣瀬さん
僕は妻が働いていた製陶所に1年間勤めた後に独立して、バイトもしながら自分の作品を作っていました。
鳥取市へ移住をしたきっかけは?
小渕さん
私が、製陶所を辞めて独立しようかなというタイミングで、自分の作業場を探すにあたって、地元の岡山県あたりに帰ってこようかなと考えて、いろんな方に声をかけていました。
工芸を核とした村おこしに取り組む、西郷地区で募集があったんですね。
小渕さん
西郷地区は「いなば西郷 工芸の郷(さと)構想」という形で力を入れておられるそうです。
鳥取市の他に移住を検討した場所はありましたか?
小渕さん
備前は一度見学に行きました。夫の出身地である愛知県の焼き物の産地も候補に挙がりました。
西郷地区の移住情報の収集はどのようにされましたか?
小渕さん
私たちは恩師から西郷地区の話を聞き、その後に二泊三日で実際に見学してみました。ネットなどで情報を集めたりとかはしませんでしたね。おおよそのことは、暮らしだしてから発見していきました。
栃木と鳥取で生活の変化はありましたか?
小渕さん
栃木の益子は雪が降らないのでそこが大きな変化です。あとはスーパーまでの距離がちょっとあるくらいでしょうか。今は家からスーパーまで車で15分くらいかかってます。
お住まいはどんな方法で探されましたか?
小渕さん
工芸の郷構想を進めている『一般社団法人 西郷工芸の郷 あまんじゃく』さんが空き家の紹介事業も運営されていて、紹介していただきました。
移住前は都市部にお住まいだったんですか?
廣瀬さん
移住前も田舎といえば田舎でしたが、観光地でもあったので賑わいがあり、医療や買い物は一つの街の中で済ませることができました。
移住後、病院や買い物で困ったりすることはありますか?
小渕さん
最初は倍くらい遠くなった気がしましたが、今はちょっと遠くなったかなぁくらいです。移住して2年が経ち、今ではかなり慣れたので大丈夫です。
そのほかに困ったことは?
小渕さん
移住して初めての冬の積雪量にはびっくりしました。「こちらでは車は4WDじゃないと不便だよ〜」と移住先のご近所さんにアドバイスを頂いたけど、本当なんだな、と(笑)
廣瀬さん
仕事の面では、栃木県の益子と比べると鳥取県は雨が多いですね。
小渕さん
焼き物は乾かないと窯に入れられないので…。移住前は乾きの工程が1日で済んでいたけど移住後の工房では2日経っても乾かない(笑)
特に冬や雨の時期は慣れるまで大変でした。
地域の行事はどんなことが多いですか?
廣瀬さん
清掃とか草刈りがあります。
地域の作家さん同士で交流はありますか?
小渕さん
月に1度、地域の作家が集まる交流会があります。陶芸の他にもガラスや木工など、地域に9つほどある工房の方や「西郷工芸の郷あまんじゃく」の代表理事さんも参加されて、お昼を食べながら今後の西郷地区での工芸家の活動についてなど話します。
交流会の議題の内容を教えてください。
小渕さん
西郷地区での「工芸の郷」としてイベントやその方向性が主ですね。毎年10月に開催される「西郷工芸祭り」に関することや、最近できたギャラリーの話だとか。話し合って方針を決めます。
実際話し合いに参加されて変化はありましたか?
小渕さん
みなさんとても活躍されている方なので、とても刺激があります。
移住前に2回見学に来られたそうですが、移住後にギャップはありましたか?
小渕さん
すごく困ったことはありませんでしたね。移住前の二泊三日の見学で概ねイメージが掴めていたように思います。
移住してよかったですか?
小渕さん
よかったと思います!
栃木にいたらそのままずるずると過ごしてしまい、作家として自分の作品を作れない気がしていたので…それでもどうにかなったかもしれませんが、生活の場を移したことで一気に気持ちも切り替えられた気がします。
鳥取市での将来の夢を教えてください。
廣瀬さん
作ったものを販売させてもらって食べていけたら十分ですね。
小渕さん
陶芸で田舎を楽しみながら生活できたらいいと思います。
これから移住を考えられている方へメッセージがあればお願いします。
小渕さん
移住を決める前に何日間かその地区に泊まったり体験できる機会があるなら、ぜひやってみることをおすすめします。
夏や冬を体験してから移住されると、イメージがつかみやすいかもしれません。
ありがとうございました。