「へぇー!帰んないって言わなかったけ?」みたいな(笑)
2009年に東京都から移住徳本敦子さん
自然の力強さの中で子どもたちをたくましく育てる環境づくり
自然の素晴らしさで創造性と生きる力を育てる
Profile
子育て世帯・出身は神奈川県
2009年 東京都から鳥取市へIターン
ぶっちゃけ話、聞いてみました! INTERVIEW
鳥取市にIターンされたのはいつ頃ですか?
徳本さん
2009年ですね。
Iターン前のお住まいは?
徳本さん
東京にいました。
Iターンをするきっかけは何でしたか?
徳本さん
夫が鳥取出身なんですけど、昔は「一生、鳥取には帰らない」って言ってたんですよ。2人目を出産して、3人目を妊娠中のある日、夫が突然「鳥取に帰ろうと思う」って言い出したんです。
それで夫の話を聞いたんですね。すると「子供が生まれて食べ物に興味が出始めた。安心安全な食べ物を食べさせたい意識が芽生えた」と。
農業を全くしたことない人なのに。
私のおばあちゃんが農業してたんですけど、両親は違う仕事をしていたし農業は身近ではなかった。でも夫が「決意は固い、覚悟が出来た」と言うので「わかりました。絶対やめないね」って感じでした。
旦那さんは東京でどんな仕事をされてたんですか?
徳本さん
もともと私も夫もミュージシャンなんですよ。私はポップスで大昔にメジャーデビューもしました(笑)
2人組で相方は男性で作曲担当、私が作詞担当。
ツインボーカルでやってたんです。
1年経って相方がリタイアしたので止む無く解散してそこからソロになって。その後、事務所に入ってきたのが私の夫でした。
旦那さんはグループで?
徳本さん
旦那も2人組でした。彼がボーカルでギターの相方がいたんですよ。でも相方が裏方に回ることになってソロになった彼はストリートライブとかライブハウスでガンガン活動を始たんです。そこで私がちょっとアドバイスしたり手伝ったりしていました。
今のお仕事である、森のようちえんとの出会いは?
徳本さん
移住してほどなく、夫が智頭にある「森のようちえん」を見つけてきて「こういう幼稚園があるんだけどどう?」ってHP見せてくれたんです。
“雨の日も雪の日も外で過ごしまーす”って書いてあるのを見て…無理!!ってなった(笑)
寒がりなんですよ私が。
雪の日もだなんて寒いのに~みたいな感じで却下したんですけど。当時、私のママ友がすでにそこの『おやこ組』っていう週1回のクラスに親子で参加してたんですよ。
その友達が「子供って雨も雪も大好きじゃない?」って言うんですよね。それを聞いて「そっか私も小さいときは大好きだったなぁ」って思い出した。「私はなんて大人目線で考えてたんだろう」と気づいて、それで体験に行ったんです。
当時、年少さんだったうちの長男はすごい甘えん坊で、私から離れない子だったんです。そんな子が泥だらけの坂道に手をついてがんがん登って行くし、滝つぼみたいな所に靴のまんまザブザブ入って行って…
「この子のこんな姿見たことない」ってびっくりました。自然ってすごいなって思いました。
「この子のために「森のようちえん」に入れよう!」って思いました。結局、子どもたち全員入園させました。上は年長、下は2歳でした。
過保護になってしまう親御さんも多いと思うんですが、それでは自分で考える力が育たないと。
徳本さん
それは大人が先に口出ししちゃうことが多いんですね。
私が運営する「森のようちえん」のスタッフには子どもたちに「危ない!ダメ!汚い!早く!」を言うのを禁止しているんですね。
でも普通に子育てしているとこの4語しか言わないんですよ。でも危ないからといって子どもの行動を制限すると、怪我をする経験もできない。
「汚い」って言うのは大人の価値観であって、例えば泥が汚いって思う子は手を洗えばいいんですよ。汚いって言って泥すら触らず大人になってしまう。それはとても危険なんじゃないかと。
「早く」っていうのも、子どもがパニックになってしまいますよね。できるまで待ってあげる。必ずできるはずだから。時間をかけてできたら達成感を感じることができます。
自己肯定感を高めるってそういう小さいことの積み重ねなんですよ。生活の中では難しくても、「森のようちえん」の生活はカリキュラムもないので一人一人が自分のペースで過ごすことができます。
すべてのことを自分でするし、全ての責任を自分で持つ。そんなことが小さい頃からできれば、大人になった時に大きな糧になると思います。
お子さんを幼稚園に通わせたのちにスタッフになられたんですか?
徳本さん
そうです。普通にパートで働きはじめました。
子どもたちは1年間「森のようちえん」に通ってたんですけど、園まで距離があったので、移動だけで結構疲れてるかなって夫婦で話し合って、一旦長女が小学校に上がるタイミングで普通の保育園に預けました。
その保育園も良い先生ばかりで、園庭もすごく広いとこだったんですけど、私の中ではやっぱり「森のようちえんがいいなぁ」っていう想いが消えなくて...
例えば雪が降った日はスキーウェア持って来てくださいって言われるんですよ。『やったー!雪遊びだ!』と思ってると『今日は30分遊びました』って報告される。
『えー30分だけ!?一日外でいいじゃん!もったいないなぁ』って思っちゃって。私の地元が神奈川で雪が降らないとこだったので、雪が降る幸せ感をもっともっと子供たちに味あわせたいなって思ったんですよね。
もっと外で遊ばせたい、自然の中で過ごさせたい、自然相手に遊ばせたいって思って、そうして立ち上げたのが『風りんりん』です。
当時は鳥取市内には毎日森に行く園が無かった。しょうがないので1番下の娘が年中になる歳に起ち上げました。「園児2人でもいいから森のようちえんって言い張ろう!」みたいな(笑)
そしたら最初に6人園児が集まってくれた。2014年に子ども6人、スタッフは私を入れて3人でスタートしました。一番最初に入園を決めてくれたお母さんは今うちのスタッフで働いてます。
現在どれくらいの園児さんがいるんですか?
徳本さん
今は2園あるんですけど、南隈の方は68人ぐらい。南隈の方は0~1歳もいる企業主導型保育園です。森のようちえんであり保育園でもあるみたいな感じですね
土曜日もやっています。
宮谷の方は私の自宅を拠点に8年前に開園しました。
そこは県の認証制度の規定で2歳からしか預かれないんですけど...
親御さんの中には、0~1歳から入れたい方や、土曜日に森のようちえんにお子さんを通わせたい方も多かったんです。
なんとかそこを受け入れできないかなって考えていた時に「企業指導型」という形態を知ったので「それを作ろう!」となって、南隈にできたのが2020年1月です。活動内容自体は2歳以上は全く一緒です。
移住を検討されたとき、別の候補地はありましたか?
徳本さん
ありませんでした。
旦那さんの実家にお住まいになられた?
徳本さん
そうですね。
移住後、三人おられるお子さんの育児はいかがでしたか?
徳本さん
旦那のご両親にすごく助けてもらいました。感謝しています。
鳥取市に来た年に下の子を出産したので…義父と義母には本当にお世話になりました。私が子どもをお風呂に入れて、私が素っ裸のまんま義理の父に子どもを渡したり(笑)
母は強し!ですね
移住後、旦那さん以外から鳥取市に関する情報収集はされましたか?
徳本さん
全然!(笑)
でも友達も欲しいし、子どもたちと外へ行きたいなと思って最初に行ったのは『子育て支援センター』でしたね。
布勢の公園も行きました。布勢の公園で知り合った友達が、今うちのスターティングスタッフをしています。
公園で出会われた方が?!
徳本さん
そうですよ。公園でママさん見つけたら「こんにちは〜お子さんおいくつですか?」と声をかけて(笑)
そこから「私引っ越して来たばかりなんですー」みたいな(笑)
子育てって一人でやっちゃ絶対ダメです!
ストレス溜まって子どもにあたってしまうので。スターティングメンバーの何人かは公園で友達になったママさんです。
移住する前と後を比べて、生活面で一番変わったことは?
徳本さん
移動手段がないこと!
東京だとバスや電車を使って10分歩いてたらなんとかなる。だから買い物の時もすごく歩いてたんですよ。でっかい2人乗りベビーカーでどこでも行ってた。
でも鳥取市に来たらとにかく車が無いと動けない。移住したばかりのころは義母の車を借りて移動していました。しばらくして自分たちの車を手に入れたんですけど、車がないとキツいなぁと思いました。
逆に車があったらどこにでも行ける。海でも砂丘でも!
移住する前と後で、ご自身の価値観などに変化はありしたか?
徳本さん
鳥取市の方が多様性があるなって思います。
東京って、みんな“一緒じゃなきゃ不安”と思っているんですね。
子どもじゃなくて大人が。
例えば「あの子がピアノのお稽古始めたからうちも」とか。
そういう波に飲まれるのが都会だなって思います。
それと、鳥取市に来てびっくりしたのが、いわゆるマスオさんが多いことですね。旦那さんが奥さんの実家に入ってる。それが当たり前というか普通に多い。
あとは働いてるママがめっちゃ多い!東京にいた頃、私の周りのママ友は働いてない人が多くて、幼稚園も「年中から行けばいっか」くらいの感覚の人が多かったですね。
私自身も子どもと一緒にいたいタイプだったから「0歳から預けるのは可哀想」とか「子どもと長くいられる方が良い」という気持ちが強かったですね。
でもうちの幼稚園にも0歳から来てる子はいっぱいいるんですけど、社会性がめっちゃ身につくんですよ。
0歳でも自分で考えるし、自分のやりたいように行動するから、そこに親がいなくて同世代の仲間に囲まれると、0歳の子どもであってもいろんなスキルが身につくんですよ。
朝、登園の時は寂しいから泣くんですけど、親がいなくても楽しんでるし、一生懸命やっている。「なんかこういうのもいいなぁ」って思うようになりました。たくましいです、子どもたちみんな。
生きる力が身に付くんですね。
徳本さん
そうですそうです。それがすごく大事です。
移住後、生活面で一番苦労したことは?
徳本さん
引っ越した当時は、近所にコンビニが無いことがすごく不安でした(笑)
でも今はスーパーでなんでも買えるし、車もあるので不便さはないですね。
お店の数が少ないのでファッションには悩みました。鳥取の友達に『おしゃれな洋服どこで買ってるの?』って聞いたら県外に行くとかネットとかって返事で。そこはびっくりしましたね。
今は365日子どもたちと森に行ける格好をしています(笑)
それと「人間って必要なもの、そんなにないかもな」と思った。欲しいものが減りったんです。だからお店の数が少なくても困らないですね。
鳥取市に移住して良かったですか?
徳本さん
移住して良かったです!本当に。
子どもたちが自然と触れ合うことで、一番素晴らしいと思うところは?
徳本さん
常に自然の中で遊んでいるので、自然の中にぽーんと出されてもずーっと遊べるんですよ。それがすごい力だなぁって思います。
例えばウチに初めて入園してきた子は「自然と遊ぶ」という経験がないので、自然の中で自由に遊んでいいよって言うと「え?何すればいいの?」って聞くんですよ。やりたいことをなんでもしていいよって言うと「おもちゃはどこ?」って…
創造性がなくなるんですね。
徳本さん
そうです。おもちゃって「こう遊んで欲しい」って意図して作るものなので、その意図に乗っかる事に慣れてしまっている。大人の価値観を変えていかないといけないと思います。
これからの夢や目標はありますか?
徳本さん
ずっと前からですが「森のようちえん」を出た後、行かせたい小学校がないって言われる保護者の方がすごく多くて。
せっかく自分で考えて行動する力を身につけたのに、小学校に入学したら「みんな一緒じゃなきゃいけない、これをしなさい、あれをしなさい」で、そこから少しでもはみ出ると問題にされてしまう。
そういう学校に通わせるのは嫌だなって悩んで来られる方も多いので、学校を作りたいなって思ってるんです。
その学校は学びたい子は学べる環境で、でも押しつけじゃなく、自分が学びたいことを学べばいい。
小学校に上がると自然と触れ合う機会がめっきり減っちゃうんですよ。課外授業で自然に触れ合うときですら課題を与える。でも課題は自分で見つけるものだと私は思うんです。
普通の学校はとにかく考える時間を子どもたちから奪ってるなって思うんですよ。いろんな芽を摘んでしまっている。それもあって『森の学校』をやりたいなって思っています。
鳥取市への移住を検討している方へメッセージをどうぞ!
徳本さん
絶対、鳥取市は良いと思います!まずは来てみることをおすすめします!
なんと言っても子育て家庭におすすめです。
「都会じゃないと不安」って言って都会に戻る方もおられるんですけど、1度心を開いて全てを受け入れる気持ちになると、いろんな物が見えてくると思います。
引っ越してきてお散歩してた時に、空の広さにびっくりしました。東京の友達に画像送りましたもん。そこがまず違うなと思います。
それといいなと思ったのはイベントがだいたい無料。お金かかんないんですよ鳥取って(笑)
大人も楽しめるところだと思います。
一番の衝撃は子どもの様子の変化だと思います。子どもが楽しそうに野山を駆け回るのを見た瞬間に、「引っ越してきて良かったなぁ」って私は思いました。
ありがとうございました。